私は親になれない

流産を3回経験し、絶賛『鬱病』闘病中・子なし四十路女の小言。それでも切実に伝えたい事。この日本でも個人での自由な生き方がもっともっと当たり前になりますように.....。

31、かけがえのない

 

ちょうど一年ちょっと前、太ももに違和感のあるしこりを見つけて手術をした。

前述したように幸い悪性のものではなく、無事に取り除く事ができたのだが手術自体も術後もなかなかの痛みがしばらく続いた。

流産の掻爬手術や術後を経験してる身としてはこんな痛みは屁のようにも感じたが、抜糸前は如何せん突っ張ってびっこを引く。

そんな最中にちょうど不育症外来に行かなくてはならない日があった。足を引きづりながら電車に乗り、不育外来の待合で待ち、診察を終え、会計でも長時間待つ。

足の術後すぐだったためにこの時点で

『どうしてこうも病院通いばかりなのか。どんだけ待てばいいのか。ツイテナイことばっか。』

とマイナス思考に落ちいっていたのだが、その抱えたストレスの爆破スイッチが帰り道に否応無く押されたのである。

引きつった足を必死に動かして帰途についた所で猛スピードで女性がぶつかってきた。

すみませんも何もない。

運の悪いことに彼女の膝部分がちょうど手術痕にあたり私はその場で悶絶しながら倒れた。

忙しく行き交う人たちはもちろん何もいってはくれないし誰も助けてはくれない。

ただでさえ、孤独感の中で過ごしてた私にとってこの瞬間ツーっと蟻地獄にでも落ちていく感覚で自ら暗闇くんの根城へと突入した。

痛みと怒りとやるせなさと孤独感で涙が止まらない。号泣で電車に乗った。そのまま最悪の気分で旦那を迎えてしまった。

 

気分が沈んだままその夜携帯を手に取り、たまに覗いていたサイトで可愛いワンコが産まれたと書いてあった。それはもう癒されて動画まで載っていたため釘付けになり気分が一気に楽になった。

私はまだ実家にいた頃にラブラドールレトリーバーという大型犬を飼っていて、兄弟のいない私にとって弟のような存在だったために壮絶な最期を迎え亡くした後は、その別れが辛すぎて2度とワンコは飼うまいと思っていた。

旦那はなんとなくだけど、飼いたいなぁ~。というスタンスだった。

しかし日頃の会話の中でいいな、可愛いなと思う犬種は一致していた。

その犬種の子を街で見かけてはいいなぁと心で思いながらも、亡くすという恐怖心が勝って抑え込む、という繰り返し。ただ、インターネットで覗いては癒されている日々だった。

 

私がこの最強に闇に転じていた日に登場していたワンコ。それを眺めながら、珍しく旦那がビシッと動いた。

 

「この子に、会いに行こう。」

と。

 

私の気持ちもだいぶ揺らぎに揺らいだが、その可愛さとこのタイミングで出会ったことの運命をどこかで感じ、話し合いを持った上ですぐさま週末に少し遠方に車を走らせてその子のいるブリーダーさんの元へと出向いたのである。

 

事前に連絡をとっていたので私たちが到着するやいなや、ブリーダーさんは

 

「ちょっと待っててくださいね~。」

 

と立ち去り、緊張する私たちのところへ小さな箱に入れられたその子を連れてきた。

 

涙が出そうなくらい、キュンとした。

ピーピーいいながら私たちの手を舐める。

もう心は完全に決まってしまった。この子を迎えたい。

 

こうしてかけがえのない子との出会いを果たしたのである。

 

この子に出会えたのだ。ツイテナイ物事の連続も意味があったのかもしれない。と、気持ちの転換ができた時点で私はこの子から出会ってすぐに大きすぎる宝物をもらったのだ。

 

『出逢えた。』

 

そう確信した。

帰りの車の中で膝に暖かいこの子を抱えながら涙が何度も流れた。

それを旦那は運転しながら静かに見守ってくれていた。

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